レポート課題②【自分の好きな映画 】マーズアタック

ティム・バートン『マーズ・アタック!』(1996)

     『マーズ・アタック!』は初めからB級を目指してつくられた、完全なるB級映画だ。実際に見てみても、B級だとしか言い様がない娯楽映画だ。アメリカ本国での公開当初はそれどころかC級以下だろうと批判的な評価だったという。しかし私はこの映画をとても気に入っている。付き合いで見たアメコミやスパイ物の量産品のごときハリウッドアクション映画よりも、ずっとずっとこちらの方がいい。毒のあるヴィジュアルはいまだ記憶に残り、しばしば思い返される映像のひとつとなっている。
       ジャンルは、スリラー要素の多いSFコメディ映画といった感である。巨大な円盤がやってきて、火星人が現れた。賛否あったが大統領は歓迎をきめ、セレモニーをひらく。しかしその最中、ハトを見てから火星人の態度が一変、人間に対し殺戮が始まり…というドタバタ騒動をコメディ調にえがいた映画である。ときどきギョッとするようなショッキングなシーンもあるがそれすらコミカルになっているため、シュールな空気が全篇通してただよっている。
    宇宙人が地球にやって来るという物語では、大抵その対立は物語の重要なシーンになる。それは葛藤、苦悩、迷い、そして辛い決断となったり、観客もそれぞれの立場になって考えさせられる内容のものとなる。『第9地区』などはそうだった。しかし『マーズ・アタック!』はそんなものは一切ない。むしろそうしたものを皮肉するかのように、作中一貫して人間は間抜け、火星人は情け容赦なく狡猾にえがかれ、水戸黄門並の勧善懲悪物語となっている。途中、火星人が危害をくわえたことを大統領に謝罪するというシーンがあるが、和解するのか、と思いきや直後に光線銃である。火星人に同情できる要素は何一つなく、非常に単純な構造のストーリーだ。だがそこが痛快でもある。
    視覚的にもコミカルでシュール、かつ衝撃的な数々の映像が面白い。拉致された女性とチワワの頭がすげ替えられたり、チワワ頭の人間が堂々と過ごしていたりと良い意味でのツッコミどころがたくさんある。一方でSFの見せ所である合成、特撮などはかなり粗末だ。円盤など取ってはり付けたようであるし、火星人女などは作り物感満載である。いかにもB級という雰囲気に拍車をかけているこの合成技術は、年代を考慮してもかなり不自然で安っぽい。がそれがかえって面白おかしく、またこの映画の象徴性すら感じられるので、演出効果としては大正解なのではないかとおもわれる。
      『マーズ・アタック!』はくだらない映画だと言われたら、反論はできない。しかし、ヴィジュアルの秀逸さとか、シュールなおかしさだとかが心に残り、今も忘れられない映画だ。人に勧めたりはしないが、気が向いたら見てほしいとも思う、奇妙な映画だ。

(2016年2月大学に提出)